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法務局からの「長期間相続登記等がされていないことの通知」とは?

法務局から突然「長期間相続登記等がされていないことの通知」が届いて戸惑われている方はいらっしゃいませんか?
これは、『所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法』に基づき法務局から送付されたもので、「あなたが相続人になっている不動産が長年相続登記されていません。」という通知です。
今回は、この通知が届いた場合にどのように対応したらいいのかを解説します。

所有者不明土地の問題点

不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない、又は判明しても連絡がつかない土地(所有者不明土地)が全国に多く存在し、社会問題になっています。
所有者不明土地問題研究会の調査によると、その面積は2016年の時点で約410haに上り、九州全体の面積よりも広く、今後も人口減少や高齢化とともに増え続けると考えられています。

所有者不明土地の問題点は、まず、そのままでは売却や貸し借りなどの取引ができないことです。したがって、その土地を活用しようとした際に支障が出てしまい、インフラ整備、災害の際の用地取得や復興事業が進まない原因になってしまいます。
また、このような土地は適切な管理がされておらず、草木が生い茂ったり、不法投棄されるなど、周辺の環境に悪影響を及ぼすほか、倒壊のリスクがある家屋などが残っている場合には周辺住民に危険を及ぼしてしまう可能性があります。

所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法とは

所有者不明土地になってしまう原因としては、単に所有者が行方不明になっている場合もありますが、多くの場合は所有者が変わった際の名義変更(所有者移転登記)がされていないことです。
所有者が亡くなり、相続が発生したにもかかわらず、相続人が相続登記をせず放置し続けるうちにその相続人も亡くなり、新たな相続が発生してしまうことを何代も繰り返すと、相続人の特定や相続人間の調整が困難になり、相続登記ができず所有者不明土地になってしまいます。

そこで、平成30年に制定されたのが「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」です。
この特別措置法に基づき、所有者の死後、長期間(30年以上)相続登記がされていない土地について、所有者の法定相続人を法務局の登記官がその職権で調査したうえで、長期間相続登記未了である旨を登記に付記する作業を行います。
また、調査で判明した法定相続人のうち任意の一人に対して、相続登記の促進を目的に送付されるのが「長期間相続登記等がされていないことの通知」です。

長期間相続登記等がされていないことの通知が届いたら

長期間相続登記等がされていないことの通知が届いたということは、あなたが特別措置法に基づいて調査された土地の法定相続人の一人であり、法務局から相続登記を促されている、ということになります。
この通知には、対象の土地の所在や法務局の調査の結果に基づいて作成された法定相続人情報の作成番号が記載されています。

相続登記を検討される場合には、通知に記載された土地の登記事項証明書と法定相続人情報を法務局で閲覧することができ、ほかの法定相続人の氏名や住所について知ることができます。(法定相続人情報を閲覧できるのは、対象の土地を管轄する法務局のみです。)

法定相続人が誰なのかを確認し、相続人が複数人の場合、法定相続分どおりに相続登記することも可能ですが、法定相続人全員で遺産分割協議を行い、話がまとまれば一部の人が相続することも可能です。
相続についての方針が決まったら、相続登記の手続きを行いましょう。

通知に記載された土地についての特例措置

通知に記載された土地の相続登記を申請する場合、下記の書類の添付が不要となる特例措置が設けられています。
・被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍等
・相続人の現在の戸籍
・物件を取得する相続人の住民票

つまり、通常、相続登記の手続きの際に添付書類として必要な戸籍謄本等の提出が原則不要になり、手間と費用が大幅に軽減されます。
とくに長期間放置されている場合だと、戸籍謄本等の収集はかなり大変なものになりますが、この通知に記載されている土地についてはすでに戸籍を調査したうえで作成された法定相続人情報がありますので、改めて調査する必要がありません。

しかし、この通知を受け取った後も引き続き相続登記しないままになってしまうと、さらなる相続が発生し、将来、相続登記をしようとしたときに困る可能性があります。
したがって、この特別措置法で送付された「長期間相続登記等がされていないことの通知」を活用し、この機会に相続登記を行うことをおすすめします。

まとめ

全国的に問題になっている所有者不明土地と、その解消に向けて制定された『所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法』に基づいて送付される「長期間相続登記がされていないことの通知」について解説しました。

この通知書の受取をきっかけに相続登記を検討される場合、戸籍謄本等の収集など通常の手続きよりは手間が軽減されますが、ご自身以外の法定相続人への連絡や遺産分割協議、必要書類の作成、登記申請など、ご自身での手続きに不安を感じた場合には、まずはお気軽に当事務所までご相談ください。

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