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相続の手続きがスムーズになる「法定相続情報証明制度」とは?

平成29年5月29日から全国の法務局で「法定相続情報証明制度」がスタートしました。この制度を利用すると、従来より相続の手続きをスムーズに進めることができて便利です。
どのようなところが便利なのか、また利用するためにはどのような手続きをすればいいのかなどをご紹介します。

法定相続情報証明制度とは?

人が亡くなり相続が発生すると、亡くなった方(被相続人)名義の不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の解約、相続税の申告など、複数の機関で手続きが必要になります。
その際、相続人は相続人である証明として、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本や相続人全員の現在戸籍などの一式を提出しなければならず、場合によっては大量の必要書類を各機関ごとに何度も提出することになります。
このような時に、戸籍謄本等一式の代わりに「法定相続情報一覧図の写し」を提出することで手続きを進めることができるようになりました。

法定相続情報証明制度とは、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や相続人全員の現在戸籍等一式と、相続関係がわかる一覧図(法定相続情報一覧図)を登記所(法務局)に提出し、法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出をすることで、登記官が内容を確認し、認証文をつけた「法定相続情報一覧図の写し」(法定相続情報証明)を無料で交付してもらえる制度のことです。法定相続情報一覧図の原本は法務局で5年間保管され、その間は申出人に限り何度でも再交付が可能になります。

メリット

◇手数料が無料
 法定相続情報証明制度は、手数料がかかりません。法定相続情報一覧図の写しは無料で交付され、保管されている5年間は何度でも再交付してもらえます。

◇相続の手続きがスムーズになる
 不動産や預貯金などの名義変更の際に、法定相続情報一覧図の写しを提出することで、戸籍謄本等の束を各機関ごとに何度も提出する必要がなくなります。相続関係が一覧になっていて一目でわかるので、各機関において戸籍謄本等の束をすべて確認して相続人を特定するといった手間がかかりません。
 また、多数の手続きを同時に進めたい場合に、法定相続情報一覧図の写しを複数枚取得しておけば、戸籍謄本等を使いまわしたり集めなおす必要がなく、費用と時間を節約することができます。

◇代理人による申出が可能
 多忙で時間がない方や外出が難しい方でも、相続人本人(申出人)が委任をすれば、相続人の親族や専門家(司法書士など)が代理で申出をすることができます。

◇郵送でも申出が可能
 管轄の登記所へ実際に足を運ばなくても、郵送で申出をすることができます。

デメリット

◆戸籍謄本等の収集
 法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出をする際に、戸籍謄本等一式を一度は収集する必要があります。

◆法定相続情報一覧図の作成
 法定相続情報一覧図の作成方法は決められており、正確に作成しなければいけませんので、慣れていないと手間がかかってしまう場合があります。したがって、相続手続きをする機関が1ヵ所だけなど少ない場合は、法定相続情報一覧図を作成する手間をかけるほどのメリットはないかもしれません。

◆申出から交付までの期間
 申出後、交付されるまでには一定の期間が(一般的には2,3日~1週間ほど)かかります。

◆使用できない場合もある
 一部の金融機関等では従来どおり戸籍謄本等一式の提出を求められることがありますので、使用できるかどうかあらかじめ確認することが必要です。

手続きの流れ

法定相続情報証明制度の手続きの流れは、以下のとおりです。
(詳細については、法務局のホームページをご参照ください)

①必要書類の収集
 申出に必要な書類を収集します。
 〇必ず必要な書類
 ・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等
 ・被相続人の住民票の除票
 ・相続人全員の現在の戸籍謄本または抄本
 ・申出人の氏名・住所が確認できる公的書類(※)
  ※住民票(原本)、運転免許証等のコピー(原本と相違ない旨を記載し、申出人が記名する)など
 ○上記の書類のほかに、各相続人の住民票や委任状などが必要な場合があります。
  ↓
②法定相続情報一覧図の作成
 収集した戸籍謄本等から判明した法定相続人を一覧にした図を作成します。
  ↓
③申出書の記入・登記所(法務局)へ申出
 申出書に必要事項を記入し、①で収集した書類、②で作成した法定相続情報一覧図とともに法務局へ提出し、申出を行います。
 申出は、以下の地を管轄する法務局のいずれかを選択します。
 ・被相続人の本籍地(死亡時の本籍)
 ・被相続人の最後の住所地
 ・申出人の住所地
 ・被相続人名義の不動産の所在地
 なお、郵送による申出や法定相続情報一覧図の写しの交付も可能です。
  ↓
④法定相続情報一覧図の写しの交付
 申出の後、登記官が書面を確認し、間違いがなければ認証文付き法定相続情報一覧図の写しが交付されます。申出の際に提出した戸籍謄本等一式は返却されます(申出人の確認書類は返却されません)。

「法定相続情報一覧図の写し」を使用できる場面

法定相続情報一覧図の写しは、相続に起因する手続きをする際に使用することができます。

<相続登記>
相続登記(不動産の名義変更)の申請時に使用できます。
相続人の住所が記載されていれば、相続人の住所を証明する書類(住民票等)の添付も不要になります。

<銀行や証券会社での相続手続き>
預貯金や有価証券の解約、名義変更の際に使用できます。
ただし、一部金融機関では使用できない場合がありますので事前にご確認ください。

<相続税の申告手続き>
平成30年4月1日から、税務署で相続税の申告を行う際に使用できます。
ただし、被相続人との続柄がきちんと記載されていなければなりません。

<年金等の手続き>
令和2年10月26日から、被相続人の死亡に起因する年金等手続き(遺族年金、未支給年金、死亡一時金等の請求に係る手続き)を行う際にも使用できます。

このほか、死亡保険金の手続きなどでも使用できる場合がありますので、事前に提出先への確認をおすすめします。

利用をおすすめするケース

法定相続情報証明制度の利用をおすすめするのは、銀行口座が複数ある場合や、所有する不動産の管轄法務局が複数に分かれている場合など、相続手続きを行う機関(提出先)が多いケースです。
この場合、提出する機関ごとに戸籍謄本等一式を用意するのは費用がかかり経済的に負担になります。
通常は、収集した戸籍謄本等の束を順番に各機関へ提出して返却してもらうことを繰り返すことになり、提出する機関が多いほど手間と時間がかかってしまいますが、法定相続情報一覧図の写しを必要な枚数(提出先の数)発行してもらうことで、同時に複数の機関に提出することができ、スムーズに手続きを進めることができます。

注意点

法定相続情報証明制度の利用については、注意点がいくつかあります。
まず、利用できるのは、被相続人の相続人(相続人の相続人も含む)です。
ただし、被相続人や相続人が日本国籍を有していないなど戸籍謄本等を提出できない場合は利用することができません。

また、法定相続情報一覧図は被相続人が死亡した時点の相続人を明らかにするものなので、被相続人より先に亡くなっている配偶者や子の記載はされません。戸籍謄本等から判明した情報だけを記載するため、戸籍に記録されない相続放棄や相続欠格、遺産分割協議の内容なども法定相続情報一覧図には反映されません。
つまり、法定相続情報一覧図の写しだけで相続の手続きができるわけではなく、あくまで「戸籍謄本等の束の代わり」にしかならないということです。それ以外の必要書類は従来どおり用意し、提出する必要があります。

また、法定相続情報一覧図は、1つの相続について1つ作成します。
たとえば、父親が亡くなり相続が発生したあとに、母親も亡くなった場合には、父親・母親それぞれの法定相続情報一覧図を作成する必要があります。

まとめ

法定相続情報証明制度を利用することによって、相続の手続きをよりスムーズに進めることができるようになりました。法定相続情報一覧図の写しは無料で必要枚数発行してもらえるので、手続きする機関が多い場合には特に利用をおすすめします。
ただし、利用するためには戸籍謄本等の収集や法定相続情報一覧図の作成が必要になり、慣れていないと時間と手間がかかってしまうかもしれません。

法定相続情報証明制度の利用を検討されている方、相続の手続きについてお困りごとや不安なことがある方は、お気軽に当事務所までご相談ください。

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