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飼い主とペットのための終活

ご高齢の方や一人暮らしの方がペットを飼われている場合、自分の身に万が一のことがあったらどうしよう…と不安に思ったことはありませんか?
少子高齢化が進む日本社会では、高齢者のペット飼育やペットロスの問題、また飼育できなくなってしまったペットの殺処分問題が今後さらに増え、その解決が急務になると考えられます。
もしもの時、家族のようにともに生活してきたペットの命と生活を守るためにはどんな方法があるのかについて解説します。

ペットとの生活がもたらす効果・効能

ペットと生活することで得られる効果・効能については数々のデータが存在し、医学的な効果や日常生活への影響などが実証されています。
例えば、ペットとふれあうことで発生する「オキシトシン」(幸せホルモン)には、リラクゼーション効果や、安心・信頼という感情が湧いてくる効果があり、現代社会においてコミュニケーション不足の改善や健康維持、ストレス解消につながっていると考えられています。

また、夫婦間ではペットを話題にすることでコミュニケーションが増え、夫婦仲を取り持つきっかけになったり、高齢者にとっては血圧・脈拍の安定や免疫力があがるなど、健康維持の観点からも様々な実験結果が出ているほか、アニマルセラピーによる認知症予防の効果は医療現場においても注目されています。

そのほかにも、毎日の散歩による運動不足解消やうつ状態の改善にも役立つとされ、特に配偶者と死別した高齢者がおひとりで過ごされる場合、ペットにより癒しを得ることで健康維持に努める方法は効果的とされています。

ただし、ご高齢の飼い主とペットを取り巻く環境にはさまざまな問題もあります。

ペットを取り巻く問題

ご高齢の飼い主とペットを取り巻く環境について、大きな問題として挙げられるのは、殺処分問題や終生飼養義務による問題です。
まず、殺処分とは、飼い主が飼育の継続が不可能になったことを理由に、各自治体の動物愛護センターや保健所などに引き取られた動物を死に至らせ処分することです。減少傾向にはありますが、ゼロにはほど遠い現状にあります。
保健所などへ引き取りを希望する理由として、引っ越し先で飼えない、飼うことが面倒になったなどの人間側の無責任な行動によるものもありますが、飼い主が飼育できない状態になってしまうなど、飼い主側からしてもやむを得ない事情がある場合も少なくありません。

また、動物の命を守るために動物愛護管理法が改正され、終生飼養が義務付けられました。高齢者がペットとの生活を送るためには、自分の身に万が一のことがあり飼育ができない状況になった際の引き取り先を確保しておく必要があります。

殺処分問題

ペットを取り巻く問題として、犬猫の殺処分問題は避けて通ることはできません。
各自治体でも殺処分を減らす取り組みが行われ減少傾向にありますが、今後、少子高齢化や核家族化が進むことで、殺処分が増加する可能性も考えられます。

動物医療の発達や飼育環境が良くなったことにより、ペットの平均寿命が伸びており、老老飼育と言われる高齢者が高齢のペットを飼育するケースも増加しています。
この場合、もしも飼い主に万が一のことがあって飼育できなくなってしまった時、すでに老犬や老猫になっていると里親を見つけることが困難になってしまうことから、最終的に自治体に引き取られることが多く、さらに老齢であることから殺処分という判断になってしまいやすくなります。
このようなことが起こらないためにも、飼い主はどのような状況になったとしても殺処分にならないための対策を考えておく必要があります。

終生飼養義務の問題

平成25年に動物愛護管理法が改正され、終生飼養の徹底が義務付けられました。
動物の飼い主の責務として、動物がその命を終えるまで適切に飼育すること(終生飼養)が明記されるなど、動物の命を守るために必要な法改正でしたが、高齢者にとっては新たにペットを迎えたいと希望したときに大きな壁となってしまい、積極的にペットを迎え入れることが困難な環境になりました。

長年ペットとともに生活していた高齢者が、ペットが旅立ってしまうことで大きな喪失感になり、精神的に不安定になったりするペットロスという症状になってしまうこともあります。新たなペットを飼うことを希望したとしても、自身の年齢から終生飼養義務がネックとなってしまいます。

ペット相続の専門家「ペット相続士」

高齢である飼い主とペットを取り巻く問題があるなか、残されたペットが不幸な目にあうことなく健やかに暮らすための方法を提案するペット相続の専門家として「ペット相続士」が存在します。
ペット相続士は、一般社団法人日本ペットトラスト協会の認定資格の取得者です。まずはペットの命を守ることを第一とした事前対策の提案を行いますが、それだけではなく、ペット相続を含めた包括的な相続対策のご相談を承ることもできます。
よりよい提案を行うために、飼い主の相続全体についてもヒアリングを行い、その中で解決しなければならない問題があった場合、ペット相続以外の問題についても解決に導くための役割を担っています。

ペットのための信託

ペットの将来のために行う対策として挙げられるのが「信託」です。
信託とは、自分の財産を信頼できる人に託し、自分が決めた目的に沿って運用・管理してもらう制度で、登場人物は、委託者(お願いする人)、受託者(お願いされる人)、受益者(恩恵を受ける人)です。
信託の種類には「民事信託」と「商事信託」の2種類があります。

民事信託は、おもに個人間で信託契約を結び、個人の受託者が資産を管理します。
営利目的ではないため、どのように運用するかは比較的自由に決めることができますが、委託者と受益者を保護するために基本的なルールである信託法が受託者に適用されます。受託者は個人でも法人でも設定することが可能です。俗にいう「家族信託」や「ペット信託」などがこれにあたります。

一方、商事信託は、専門の信託会社や信託銀行が受託者となって資産を管理します。
資産運用による報酬の支払いが必要になりますが、国から認可された専門機関に管理を任せることで、受託者による不正などのトラブルを防止することができます。信託法に加え、信託業法が受託者に適用されます。

ラブポチ信託®

俗にいう「ペット信託」というものは民事信託で、里親や施設などペットの引き取り先を決めておかなければならないほか、事前に飼育費用を用意するために多額の現金が必要になってしまったり、里親の心変わりや施設の閉鎖、受託者の死亡など信頼性についても不安があり、普及していない現状にあります。
このような問題点を解決し、より多くの飼い主が利用できる仕組みとして開発されたのがラブポチ信託®です。
これは、認定NPO法人ピーサポネットが提供するサービスで、飼い主が委託者となり法人と契約を行う商事信託であり、飼い主が希望した内容通りに履行されることが約束されます。
なお、ラブポチ信託®はペット相続士の資格保有者だけが取り扱うことができます。

仕組みと費用

ラブポチ信託®は、飼い主が亡くなった後もペットが健やかに暮らせるよう、委託者(飼い主)が亡くなった後、ピーサポネットと提携した全国の優良な老犬・老猫施設にペットが預けられ終生飼養が行われます。そして、預けられた施設に対してペットが亡くなるまでずっと飼育費用が支払われるという仕組みです。
また、その飼育費用の捻出方法としては、飼い主自身の生命保険を利用した生命保険信託の活用、遺産をペットのために利用できるような遺言書を作成するという2つの方法が用意されており、飼い主の状況に合わせた方法を選ぶことができます。
なお、飼い主の死亡だけでなく、長期の入院や要介護の状態になってしまった時なども飼育ができなくなりますが、その場合の対策も用意されています。

これによって、飼い主が飼育できなくなった場合にもペットの命を守ることができ殺処分を減らせるほか、ペットとの生活を希望する高齢者が積極的にペットを迎え入れることを検討することができるようになり、保護動物の里親の受け皿が広がる可能性にもつながります。

まとめ

少子高齢化や核家族化が進む中で、犬猫の殺処分問題や高齢者が終生飼養義務によってペットとの共生が困難になるなど、ペットを取り巻く問題が今後さらに拡大していくことが考えられます。
飼い主が亡くなるなどの理由で飼育ができなくなってしまったとしても、その後もペットが健やかに暮らせるようにするためには事前に対策をすることが必要で、今回説明したラブポチ信託®もペット相続対策の一つとして知っていただきたいと思います。

ペットは相続財産の一つとしてみなされるため、ペット相続だけでなく相続全体についても対策を行う必要があるかもしれません。お一人お一人のお話をお聞きして、必要に応じた対策をアドバイスさせていただきます。

ラブポチ信託®にご興味のある方や、ペット相続を含めた包括的な相続対策をお考えの方は、お気軽に当事務所までご相談ください。

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