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相続に関する用語集

令和6年4月1日から相続登記が義務化されることから、これを機会に放置していた相続登記を行いたいというご相談が最近増えています。
しかし、相続は人生の中で何度も経験することではないので、聞き慣れない用語や手続きに戸惑われる方も多くいらっしゃいます。
そこで今回は、相続に関する基本的な用語について解説しますので参考にご覧ください。

「あ行」

遺産(いさん)

被相続人が残した財産のこと。
現金・預貯金・不動産・株などのプラスの財産だけでなく、借金や住宅ローンなどのマイナスの財産も遺産に含まれます。
相続が開始した際には、遺産をすべて把握し関係各所に相続の手続きをする必要があります。

遺産分割(いさんぶんかつ)

被相続人の遺産を相続人同士で分けること。
その分け方や方法について相続人全員で話し合うことを「遺産分割協議」といいます。
遺産分割協議は相続人全員の合意により成立するので、一部の相続人だけで行った遺産分割協議は無効になります。
話し合いといっても全員でどこかに集合しなければならないわけではなく、電話やメールなどでのやりとりでも構いません。

遺産分割協議書(いさんぶんかつきょうぎしょ)

遺産分割協議で合意した内容を証明するためのもの。
相続人が複数名いる場合の相続の手続きにおいて、預貯金の解約や不動産の相続登記などを行う場合に提出を求められます。
遺産について誰が何をどのくらい相続するかを書面に記し、相続人全員が署名(又は記名)して実印を押印します。実印を証明するために各相続人の印鑑証明書を添付する必要があります。

遺言(いごん)

一般的に「いごん」または「ゆいごん」と言います。
亡くなった方(被相続人)が生前に、自身の死後に財産をどうしたいのかについて意思表示したもの。
遺言を書面にしたものが「遺言書」で、遺言書があれば原則としてその内容どおりに遺産が承継されます。ですので相続手続きがスムーズになるほか、相続人同士の争いが起こりにくくなります。
遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」がありますが、民法によって決められている正しい形式で作成しなければ無効になってしまう可能性がありますので注意が必要です。

遺贈(いぞう)

被相続人が、遺言により財産を贈与すること。
遺贈によって財産をもらう人を受遺者といいます。受遺者は法定相続人以外でも構いません。

遺留分(いりゅうぶん)

法定相続人に保証された、遺産を最低限受け取ることができる権利のこと。
ただし、兄弟姉妹・甥姪が法定相続人の場合には遺留分はありません。
相続分の指定や遺贈、贈与などによって法定相続人の遺留分が侵害された場合、取り戻すためには「遺留分侵害額請求」という手続きを行う必要があります。

「か行」

改製原戸籍(かいせいげんこせき)

戸籍は法律の改正によって様式が変更されることがあり、そのたびに戸籍が新しくなりました。
この改正される前の戸籍が改製原戸籍です。「かいせいはらこせき」とも呼ばれています。

検認(けんにん)

被相続人の遺言書がある場合に、相続人に対して遺言の存在や内容を知らせるとともに、その後の偽造や変造などを防止するための手続きのこと。
被相続人の遺言書を保管していた人または発見した相続人は、家庭裁判所に遺言書を提出して「遺言書の検認」を申し立てます。申立て後、家庭裁判所から相続人全員に対して検認を行う日の通知があり、申立人と出席した相続人の立会いのもと裁判官が遺言書の形状や内容について確認を行います。
遺言書の有効性を判断するものではなく、あくまで証拠保全のための手続きですが、遺言を執行するためには遺言書に「検認済証明書」が必要になるため、検認後に検認済証明書の申請をします。
なお、公正証書遺言や法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言は、偽造や変造などの恐れがないことから検認は不要です。

戸籍抄本(こせきしょうほん)

戸籍に記載されている人のうち、一部の人の身分事項(出生・婚姻・死亡など)を証明するものが戸籍抄本です。
例えば、夫婦2人と未婚の子供1人の3人が一つの戸籍に記載されている場合、戸籍抄本にはそのうちの1人だけの身分事項が記載されています。
戸籍抄本は、本籍地の市区町村へ請求します。
戸籍事務をコンピュータ化している自治体が発行する戸籍抄本は、様式が従来の縦書きから横書きになり、名称も「戸籍個人事項証明書」に変わっています。

戸籍謄本(こせきとうほん)

戸籍に記載されている人全員の身分事項(出生・婚姻・死亡など)を証明するものが戸籍謄本です。
例えば、夫婦2人と未婚の子供1人の3人が一つの戸籍に記載されている場合、戸籍謄本には3人全員の身分事項が記載されています。
戸籍謄本は、本籍地の市区町村へ請求します。
戸籍事務をコンピュータ化している自治体が発行する戸籍謄本は、様式が従来の縦書きから横書きになり、名称も「戸籍全部事項証明書」に変わっています。

戸籍の附票(こせきのふひょう)

戸籍に記載されている人について、その戸籍の作成日以降の住民票上の住所の履歴を記録したものが戸籍の附票です。
例えば不動産登記の際に、住民票だけでは登記簿上の住所とつながらない場合などに利用します。
住民票は住所地の市区町村で取得できますが、戸籍の附票は本籍地の市区町村へ請求することになります。
本籍地がわからない場合は、本籍地の記載がある住民票を取得することで確認することができます。

「さ行」

除籍謄本(じょせきとうほん)

結婚等によって新しく戸籍を作る際や、転籍(本籍地の変更)、死亡などの理由によって、在籍していた戸籍から外れることを除籍といい、在籍している人が誰もいなくなった状態の戸籍を証明したものを除籍謄本といいます。
除籍謄本は、本籍地の市区町村へ請求します。
戸籍事務をコンピュータ化している自治体が発行する除籍謄本は、様式が従来の縦書きから横書きになり、名称も「除籍全部事項証明書」(除籍抄本の場合は除籍個人事項証明書)に変わっています。

数次相続(すうじそうぞく)

相続が開始した後、被相続人の遺産について遺産分割協議や相続登記(名義変更)が終わっていない状態のうちに、相続人のうちの一人が亡くなり、新たに次の相続が開始してしまうこと。
例えば、父親が亡くなり相続が開始したが、相続の手続きが終わらないうちに母親も亡くなってしまった場合、父親が亡くなったときに発生した相続が一次相続になり、その後、母親が亡くなったときに発生した相続が二次相続になります。
このように相続が2回以上重なることで、相続関係が複雑になる可能性があります。

相続関係説明図(そうぞくかんけいせつめいず)

被相続人の相続関係を表にまとめたもの。
被相続人を中心に、配偶者や子供などを線でつないで作成します。
家系図のようなものですが、被相続人の氏名・本籍・住所・生年月日・死亡年月日や、相続に関係する人の氏名・生年月日・被相続人との続柄などを記載します。
この表を作成することで、相続関係が把握しやすくなります。
また、法務局で相続登記を申請する際には、相続関係を証明するために収集した戸籍謄本等の原本を提出する必要がありますが、この相続関係説明図を添付することで、提出した戸籍謄本等の原本を返してもらうことができます。

相続放棄(そうぞくほうき)

被相続人の遺産について、相続人がその権利義務のすべてを放棄すること。
明らかに借金などのマイナスの遺産が多い場合や、相続問題に巻き込まれたくない場合などに相続人が検討することができる手段です。
マイナスの遺産だけでなくプラスの遺産もすべて放棄することになりますので注意が必要です。
相続放棄をしたい場合には、相続人は相続開始を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所に必要な書類を提出して手続きを行わなければなりません。
また、相続放棄をした人は相続開始時から法定相続人ではなかったことになり、他の相続人の相続する割合が増えたり、相続人でなかった人が相続権を取得することがあります。

「た行」

代襲相続(だいしゅうそうぞく)

亡くなった方(被相続人)より先に、本来相続人になるはずだった人が死亡している場合に、その子などが代わって相続人(代襲相続人)になる制度。
例えば、被相続人が死亡した時点で、被相続人の子が先に死亡していても、その子(被相続人の孫)がいる場合はその人が相続人になります。
また、本来の相続人が「相続欠格」や「相続廃除」の理由で相続権を失った場合にも、その子などが相続人になります。
ただし、相続人が「相続放棄」をした場合は、その人は相続開始時から相続人ではなかったことになるので、その子などが代襲相続をすることはできません。

転籍(てんせき)

戸籍の本籍地を移転すること。
本籍地は、日本国内であればそこに住んでいなくても好きな場所を定めることができます。
転居する際にあわせて本籍地を移転することも、住所地は変わらないまま本籍地だけを移転することも可能です。
本籍地と住所地を同じにする必要はありませんが、戸籍謄本は本籍地の市区町村に請求するため、住所地から遠方であれば取り寄せに手間がかかってしまいます。
また、転居にあわせて何度も転籍をしていると、手続きに必要な戸籍謄本を取得するためにあちこちの市区町村に請求することになる可能性があります。

特別受益(とくべつじゅえき)

一部の相続人だけが被相続人から受け取った特別な利益のこと。
特別受益がある場合、他の相続人との不公平さからの争いを防ぐために、その利益を考慮したうえで各相続人の相続分を決めることができます(特別受益の持戻し)。
例えば、遺贈によって受け取った財産や、事業のための資金、住宅購入のための資金などの生前贈与がその対象になる可能性があります。
ただし、他の相続人が特に気にせず請求しない場合や、遺言書に特別受益を考慮しないと書かれている場合などは、特別受益を考慮する必要がありません。

特別代理人(とくべつだいりにん)

家庭裁判所に申立てを行い、特別に選任された代理人のこと。
相続人の中に未成年者がいる場合、未成年者は単独で法律行為を行うことができませんので、本来はその親権者が法定代理人になります。
しかし、遺産分割協議などを行う際に未成年者とその親権者との利益が相反してしまう場合には、未成年者のために特別代理人を選任しなければなりません。
父親が亡くなりその相続人が配偶者である母親と未成年の子である場合などがその例です。
また、認知症などによって判断能力がない成年被後見人とその成年後見人との利益が相反してしまう場合にも、特別代理人の選任が必要になります(成年後見監督人が選任されている場合には成年後見監督人が代理人となります)。
特別代理人になるために資格等は特に必要ありませんので、利害関係のない親族を候補者にすることが多いのですが、適当な候補者がいない場合には司法書士などの専門職を候補者にすることも可能です。

「な行」

名寄帳(なよせちょう)

市区町村が作成している固定資産課税台帳を所有者別にまとめたもので、所有不動産を一覧で確認することができます。
毎年4月ごろに自治体から不動産の所有者あてに送付される固定資産税納税通知書(課税明細書)とだいたい同じ記載内容ですが、名寄帳には(自治体にもよりますが)非課税物件も記載されますので、被相続人が所有していた不動産を調査するときなどに活用することができます。
ただし、毎年1月1日時点の情報であるため、それ以降に取得した不動産は記載されていません。新たに取得した不動産がある場合は注意が必要です。
名寄帳を取得するためには、所有不動産が所在する市区町村の役場で請求します。
誰でも請求できるものではなく、所有者本人、本人から委任された代理人、所有者本人が亡くなっている場合には相続人か相続人から委任された代理人等が請求することができます。

認知(にんち)

非嫡出子(婚姻関係にない男女の間に生まれた子)について、その父親が自分の子であると認めることで、父親との法律上の親子関係を成立させること。
認知された子には相続権があり、その法定相続分の割合は嫡出子(婚姻している夫婦の間に生まれた子)と同じです。

「は行」

不在者財産管理人(ふざいしゃざいさんかんりにん)

行方不明の人(不在者)の財産を本人の代わりに管理する人のこと。
相続の場面で必要となるのは、相続人の中に居所がわからず音信不通の行方不明者がいるときです。
遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、相続人の中に行方不明者がいるときには手続きを進めることができません。
この場合、行方不明の相続人に代わって遺産分割協議に参加する「不在者財産管理人」の選任を家庭裁判所に申し立て、選任された人が家庭裁判所から「権限外行為の許可」を得ることで遺産分割協議を行うことができます。
ただし、不在者財産管理人の任務は遺産分割協議が終わっても終了するわけではなく、不在者が見つかる・不在者本人が財産管理人を選任する・不在者の死亡が確認される・不在者の財産がなくなる・不在者が失踪宣告される等の理由に該当しない限りは、必要に応じた財産管理を続けながら家庭裁判所へ適宜報告しなければなりません。

法定相続情報一覧図(ほうていそうぞくじょうほういちらんず)

被相続人の法定相続人について相続関係を一覧にして図にしたもの。
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や相続人の戸籍謄本等をもとに法定相続情報一覧図を作成し、法務局に保管及び交付の申し出をすることで、登記官が内容を確認し、認証文をつけた法定相続情報一覧図の写しを無料で交付してもらえます。
法定相続情報一覧図の写しは、相続登記や預貯金の解約など相続の手続きの際に提出を求められる大量の戸籍謄本等の束の代わりに提出することができるので、提出先が多い場合には何通も交付してもらっておけばスムーズに手続きを進めることができます。
また、法定相続情報一覧図の原本は法務局で5年間保管され、その間は申出人に限り何度でも一覧図の写しの再交付が可能になります。

法定相続人(ほうていそうぞくにん)

民法で定められた被相続人の遺産を相続できる人(相続人)のこと。
遺言書がない場合、法定相続人全員で遺産分割協議を行い相続の手続きを進めることになります。
被相続人の配偶者は常に法定相続人になり、配偶者以外の被相続人の血族は以下のように相続順位が定められ、配偶者とともに相続人になります。
第1順位:被相続人の子供
     ※子供が先に死亡している場合は代襲相続として孫などの直系卑属
第2順位:被相続人の親や祖父母などの直系尊属
第3順位:被相続人の兄弟姉妹
     ※兄弟姉妹が先に死亡している場合は代襲相続として甥姪

法定相続分(ほうていそうぞくぶん)

民法で定められている法定相続人が相続できる割合のこと。
法定相続人の範囲や人数によってその割合は変わります。
ただし、法定相続分どおりに分割して相続しなければならないわけではなく、法定相続人全員で合意すれば自由に相続割合を決めることができます。

「や行」

遺言(ゆいごん)

一般的に「いごん」または「ゆいごん」と言います。
亡くなった方(被相続人)が生前に、自身の死後に財産をどうしたいのかについて意思表示したもの。
遺言を書面にしたものが「遺言書」で、遺言書があれば原則としてその内容どおりに遺産が承継されます。ですので相続手続きがスムーズになるほか、相続人同士の争いが起こりにくくなります。
遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」がありますが、民法によって決められている正しい形式で作成しなければ無効になってしまう可能性がありますので注意が必要です。

遺言執行者(ゆいごんしっこうしゃ)

遺言書の内容のとおりに相続が実行されるように手続きを行う人のこと。
遺言者の亡き後にその意思を実現するため、遺言執行者にはさまざまな手続きを行う権限があります。

遺言執行者を選任する方法は、遺言者が遺言書で指定する、第三者に遺言執行者を指定してもらうように遺言書に定める、利害関係人が必要に応じて家庭裁判所に申し立てるの3つです。
選任された人は、承諾するか断るかを選択し、承諾する場合は遺言執行者として相続財産や相続人を調査し、遺言書の内容に従って相続手続きを行った後、相続人全員に完了報告をしなければなりません。

相続(遺言執行)の手続きは慣れないうえに、銀行や法務局など平日しか対応してもらえない手続先もあることから、手間や時間がかかってしまうかもしれません。遺言執行者にはあらかじめ司法書士などの専門家を指定することもできるほか、遺言執行者の立場から専門家へ依頼することも可能です。

養子縁組(ようしえんぐみ)

実際の血縁関係にない人の間に法律上の親子関係を発生させること。
親の立場を養親、子の立場を養子といいます。養親が亡くなり相続が開始した場合、養子には養親の実子と同様の権利があり、相続する割合も同じになります。
養子縁組には、特別養子縁組と普通養子縁組の2種類があります。
特別養子縁組における養子は法律上、実親との親子関係がなくなるため、実親の相続人になることはできません。一方、普通養子縁組における養子は、実親との親子関係も継続されますので、養親の相続人にも実親の相続人にもなります。

ご相談はお気軽にどうぞ

令和6年4月1日から相続登記が義務化されます。
相続登記は放置していると相続関係が複雑になってしまい、次の世代の負担を増やしてしまいますので、できるだけ早めの手続きをおすすめします。

相続の手続きについてお困りごとや不安なことがある方は、お気軽に当事務所までご相談ください。

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