Blog

相続の基礎知識をわかりやすく解説!【相続の方法と手続き】

「相続の手続きって、何からどう始めたらいいのかわからない…」
慣れない手続きには戸惑いがつきもので、取りかかりづらいものです。
しかし、なにもしないまま放っておくと後々思わぬトラブルになることも…
今回は、相続の方法と手続きについて解説していきます。

相続の方法と手続き

人が亡くなった時から相続は開始され、亡くなった人(被相続人)が所有していた預貯金や不動産などを相続人へ承継する手続きが必要になります。
相続の方法にはさまざまなパターンがあり、それぞれに手続きが異なりますので、あらかじめ知っておくと安心です。

まず、被相続人が作成した遺言書がある場合には、①遺言書による相続手続きとなります。
しかし、遺言書がない場合や内容に不備があり無効になってしまった場合、一部の財産についてしか書かれていない場合などは、相続人全員で話し合いを行う②遺産分割協議が必要になります。
さらに、話し合いがまとまらない場合には、③遺産分割調停・審判によって相続をすすめなければなりません。

また、事情によっては相続をしないという選択をすることもあるかもしれません。その時には④相続放棄という手続きをすることもできます。

①遺言書による相続

相続において最も優先されるのは「遺言書」です。
遺言書がある場合とない場合とでは相続の手続きが変わってきますので、まずはじめに、被相続人が作成した遺言書の有無を確認する必要があります。
生前に遺言書の存在が明らかになっている場合はその遺言書をもとに手続きをすすめますが、被相続人が遺言書の存在を誰にも明かしていない場合もあります。その場合は、
・公証役場に公正証書遺言の照会(公正証書遺言)
・法務局に遺言書保管事実証明書の交付の請求(法務局における自筆証書遺言の保管制度)
・自宅や金庫、銀行の貸金庫などの調査
などを行い、見つからない場合にはないものとしてすすめていくほかないと考えます。

大前提として、遺言書がある場合はその内容が優先されますが、相続人全員で遺産分割協議を行い全員が合意すれば、遺言書と異なる内容で相続することが可能とされています。
また、遺言書の内容に納得できない場合、一定の範囲の相続人は、最低限保証された遺産の取得分である「遺留分」を請求することができます(遺留分侵害額請求権)。
一定の範囲の相続人とは、配偶者や子・孫(直系卑属)、父母・祖父母(直系尊属)を指し、兄弟姉妹・甥姪には遺留分がありません。

遺言書の種類

遺言書が遺されていた場合、遺言で指定された相続人または遺言執行者が、遺言書の内容を実現するために各種名義変更の手続きを行うことができます。
ただし、遺言書の種類には以下のようなものがあり、それぞれ取扱いが異なりますので注意が必要です。
(1)自筆証書遺言
   遺言者自らが自筆で作成した遺言書 <原本を遺言者自身が保管>
(2)秘密証書遺言
   遺言者自らが遺言書を作成し、公証役場において内容は秘密のまま、
   公証人と証人の前で自らが作成したものだと確認した遺言書 <原本を遺言者自身が保管>
(3)公正証書遺言
   遺言者が決めた遺言内容に基づき、法律で定められた方式に従って公証人が作成した遺言書
   <原本は公証役場が保管、正本・謄本は遺言者等が保管>
(4)法務局における自筆証書遺言の保管制度を利用した遺言(令和2年7月10日施行)
   自筆証書遺言を作成後、法務局(遺言書保管所)に保管を申請した遺言書
   <原本・画像データを法務局(遺言書保管所)が保管>

遺言書の取扱いの注意点

遺された遺言書が(1)自筆証書遺言と(2)秘密証書遺言の場合は、遺言者が亡くなった後できるだけ速やかに、必要書類とともに家庭裁判所へ提出して「検認の申立て」を行う必要があります。

検認とは、遺言書の内容を明らかにしたうえで、相続人全員に遺言書の存在と内容を共有し、偽造や隠ぺいなどを防止する手続きのことです。
遺言書の効力を判断するものではありませんので、検認したからといって有効な遺言書であることが確定するわけではなく、内容に不備があれば無効となってしまう可能性もあります。
また、封印がされている遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いのもと開封しなければなりません。
検認や開封について、定められた手続きを経なかった場合、遺言書自体は無効にはなりませんが、法律で過料が課される場合がありますので、取扱いに注意が必要です。

不動産や預貯金の名義変更などの相続手続きを行うためには、検認された遺言書と検認証明書が必要となりますが、検認の手続きには時間がかかってしまうので、スムーズに手続きをすすめるためには速やかに検認の申立てを行うことが大切です。

なお、(3)公正証書遺言と(4)法務局における自筆証書遺言の保管制度を利用した遺言の場合は、検認手続きが不要となりますので、すぐに相続手続きをすすめることができます。

②遺産分割協議による相続

相続人全員で遺産について、「誰が」「何を」「どれだけ相続するか」を話し合う方法を遺産分割協議といいます。遺言書がない場合や内容に不備があり無効になってしまった場合、一部の遺産についてしか書かれていない場合などには遺産分割協議を行います。
相続人全員で合意すれば、遺言書の内容や法定相続分とは異なる分け方をすることも可能です。
ちなみに、相続人全員が同じ場所に集まって話し合う必要はなく、電話・手紙・メールなどの手段で協議をすすめることもできます。

相続人全員での話し合いがまとまったら、合意の証明として遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名押印します。この遺産分割協議書は、不動産や預貯金等の相続手続きをする際に法務局や銀行等に提出を求められる書類です。
つまり、遺産分割協議書がないと相続手続きをスムーズにすすめることができません。また、遺産分割協議書を作成しない間にさらなる相続が発生し、相続関係が複雑化してしまうこともありますので、できるだけ速やかに作成することをおすすめします。

相続税が発生する場合には、相続開始を知った日から10か月以内に相続税申告をしなければなりませんので、原則としてこの期間内に遺産分割協議書を作成する必要があります。

必要な調査~法定相続人の特定と遺産の把握~

遺産分割協議を行ううえで大切なのは、相続人全員で話し合いを行い、全員が合意し遺産分割協議書に署名押印をすることです。
つまり、遺産分割協議を行う前提として、誰が法定相続人として話し合いに参加しなければならないかを特定しておく必要があります。もしも遺産分割協議後に新たな相続人が見つかった場合は、新たな相続人を含めた相続人全員で話し合いをやり直さなければなりません。

また、各相続人に相続する意思があるかどうかも確認しておく必要があります。
相続する意思がなく相続放棄の手続きを行った人は相続人から除外されますので、遺産分割協議に参加しないことになります。

同様に、遺産の内容についても事前の調査が必要です。被相続人名義の預貯金や不動産の有無および評価額など、すべての遺産とその価値を把握しておくことが重要になります。
もしも遺産分割協議後に新たな遺産が見つかった場合は、新たな遺産の部分について相続人全員で話し合いを行わなければなりません。新たな遺産が見つかったことにより以前行った遺産分割協議の内容に納得できない相続人がいる場合は、新たな遺産も含めたすべての遺産で話し合いをやり直さなければいけません。

何度も遺産分割協議のやり直しをしないために、事前に相続人の特定と遺産の把握をしっかりしておくことが大切です。

法定相続人の特定

誰が相続の権利を有する法定相続人であるかを特定するには、被相続人の生まれてから亡くなるまでの一連の戸籍謄本等を取り寄せて相続人調査をしなければなりません。
まずは、被相続人の死亡が記載されている戸籍謄本(または除籍謄本)から始まり、被相続人の出生が記載されている除籍(または改製原戸籍)まで時系列がつながるようにさかのぼって取得します。

戸籍謄本等には、出生・婚姻・離婚・養子縁組・子供の出生なども記載されているので、その内容を読み解き法定相続人を特定します。
たいていの場合は、被相続人にとって誰が法定相続人にあたるのかを把握されていると思いますが、戸籍を調査する過程で前婚の子や認知した子、養子縁組が判明することもありますので、漏れなく調査をする必要があります。実際にこの相続人調査で異父母の兄弟姉妹が見つかることが時々あります。

また、実際に相続手続きを行う際に銀行や法務局等から戸籍謄本等の提出を求められますので、取り寄せた戸籍謄本等の原本をお手元に保管しておいてください。

遺産の把握

誰が何をどれだけ相続するかを話し合うためには、被相続人の遺産のすべてを明らかにすることが大切です。
調査の方法としては、預貯金であれば自宅金庫や通帳・キャッシュカード、銀行の残高証明書から把握することが一般的です。不動産の場合は、被相続人の自宅などに保管されている登記識別情報通知(権利書)や役所から送付される固定資産税の納税通知書などから把握することが可能です。
ほかにも、被相続人あてに届いている郵便物の中に被相続人名義のものが記載されている場合がありますので、遺品を整理しながら手がかりを探し、証券会社や保険会社など可能性のある関係各所に問い合わるのも一つの方法です。

注意したいのは、プラスの遺産に加え、借金などのマイナスの遺産(債務)も調査する必要があることです。
債務は各相続人が法律上当然に法定相続分に応じて相続することになり、それぞれが債権者に対して返済義務を負うことになります。ただし、債権者の承諾があれば他の相続人の債務を引き受けることができますので、その点も踏まえて遺産分割協議をする必要があります。

あらかじめ調査の過程で大きな債務が判明していれば、相続放棄などの手段についても検討する必要があるかもしれません。

③遺産分割調停・審判による相続

遺産分割調停・遺産分割審判とは、遺産分割協議において相続人全員の合意が取れないなど、話し合いが成立しないと見込まれた時に利用できる家庭裁判所の手続きです。
遺産分割調停では、家事審判官(裁判官)と調停委員が公平な立場で相続人双方の主張を聞き、そのうえで助言や調整を行い、話し合いでの解決を目指します。
相続人同士の話し合いの中で、認識の違いなどから感情的になってしまい話し合いがまとまらなかった場合でも、遺産分割調停では、原則として相続人同士が直接顔を合わせて話し合うのではなく、調停委員が間に入りすすめていくので、冷静に話し合うことができます。

まずは、遺産分割調停申立書と必要な添付書類を家庭裁判所に提出し、調停を申し立てることからスタートします。申立書が受理されると、裁判所から調停期日(調停が開かれる日)を指定され、調停期日に申立人と相手方が裁判所に集まり、調停が行われます。

遺産分割調停で話し合いがまとまった場合は、合意を証明する調停調書を作成します。この調停調書を使用して、名義変更などの相続手続きをすすめることができます。
ただし、遺産分割調停でもまとまらず調停不成立となった場合、取り下げがない限り自動的に遺産分割審判へ手続きが移行し、裁判官が法律に従って相続の内容を決定することになります。

遺産分割調停の注意点

遺産分割調停は、分け方が決まっていない遺産について行うものなので、遺言書ですべての遺産について相続人や分け方が指定されている場合や、遺産分割協議によってすでに遺産の分け方が決まっている場合には、遺産分割調停は利用することができません。

また、遺産分割協議と同様に相続人全員が参加しなければいけませんので、事前に相続人を調査し特定していることと、すべての遺産とその価値について把握していることが必要です。
もしも、相続人の中に行方不明の方や判断能力に問題のある方、未成年者がいる場合には別の手続きが必要になりますし、相続人の特定や遺産の範囲などで争っていることがあれば、先に解決してから遺産分割調停へすすまなければいけません。

遺産分割調停は話し合いがまとまるまで何度も開催されますが、おおよそ1か月に1回、平日の日中の開催となり、多くの場合、合意に至るまでに時間がかかってしまいます。また、自分の主張がすべて通るとも限りませんので、そのことを念頭においたうえで申立てについて検討する必要があります。

④相続放棄

相続は、預貯金などのプラスの遺産だけではなく、借金などのマイナスの遺産も引き継ぐ対象になります。
もしも、遺産を把握する過程で明らかにマイナスが多いと判明した場合には、「相続放棄」という方法を選択することによって相続による借金返済などの負担を回避することができます。
また、相続争いに関わりたくないなどの理由などから、相続人から辞退したい場合も選択することが可能です。

相続放棄とは、プラスの遺産もマイナスの遺産もすべて相続しない方法で、家庭裁判所に相続放棄申述書と必要書類を提出し手続きを行います。最終的に家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が申立人に送付されることで、正式に相続放棄の手続きが完了し相続人から除外されたことになります。

ただ、注意しておきたいのは、相続開始を知った日から原則3か月以内に手続きをしなければ相続放棄は受理されないということです。この期間は遺産を把握し相続をするかしないかを検討する熟慮期間として設けられており、期限を超えると自動的に相続を承認したことになってしまいます。
もしも、この期間内に決定できない場合には、家庭裁判所に相続放棄期間伸長の申立てを行い、家庭裁判所が認めた場合には熟慮期間が伸長され、この伸長された期間内に手続きをすれば相続放棄は可能になります。

まとめ

◆相続の方法
①遺言書による相続
 遺産分割をしなくても、遺言書にもとづき相続手続きが可能。
 (遺言書の種類によっては「検認」手続きが必要)
②遺産分割協議による相続
 相続人全員による話し合い(遺産分割協議)で合意した場合、「遺産分割協議書」を作成する。
③遺産分割調停・審判による相続
 家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、裁判所における話し合い(調停)で合意した場合、調停調書が作成される。
 合意に至らなかった場合、裁判所の決定(審判)によって相続の内容が決まり、審判書が作成される。

~プラスの遺産もマイナスの遺産もすべて相続しない方法~
④相続放棄
 家庭裁判所へ相続放棄の申述をして、受理されれば「相続放棄申述受理通知書」が送付され相続人から除外される。
 (相続開始を知った日から原則3か月以内に手続きをしなければならない)

◆前提として、法定相続人の特定と遺産の把握のための調査が必要!

不動産の名義変更や預貯金の解約などの相続手続きをするためには、「誰が何を相続するのか」を確定しなければなりません。そのための方法について今回は解説させていただきました。
相続に関するお困りごとがありましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。

SHARE
シェアする

ブログ一覧

0