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「終活」とエンディングノート

少子高齢化が進むにつれて、”人生の終わりのための活動”の略である「終活」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
「終活」とは、自らの死と向き合い、残りの人生をよりよく過ごすために、元気なうちにあらかじめ考え、準備しておくことを意味し、主に身の回りの整理、葬儀やお墓の準備、遺言書の作成などを行います。

今回は、「終活」を行う際に活用されるエンディングノートについて解説します。

エンディングノートとは?

「終活」を始めるにあたって、何から始めればいいのかわからないという方に活用してほしいのがエンディングノートです。
エンディングノートとは、もしもの時に備えて、自らの個人情報や希望を家族や友人などに伝えるために書き記しておくノートです。ご自身の半生を振り返りながら、いろいろな情報を自由に書き出して頭の中を整理することで、今後の人生を見直すためにも役立ちます。
ただし、エンディングノートに書いた内容には、基本的には法的効力はありません。
あくまでご自身の希望を伝えるためのもので、強制力はありませんので注意が必要です。

エンディングノートの形式には決まりはありませんので、市販されている普通のノートにいちから書くことも可能です。何を書いたらいいのかわからないという場合は、エンディングノートとして書店などで市販されているものを選ぶと、書くべき項目がわかりやすく掲載されています。
すべての項目を埋める必要はなく、書けるところから気軽に書き始めればOKです。
市販のものを購入する際には、目的に合ったタイプのエンディングノートを選ぶとよいでしょう。

エンディングノートと遺言書の違い

万が一の時に備えてご自身の希望を記しておくという意味では、エンディングノートと遺言書は似ているかもしれません。しかし、両者は次の点において大きく異なります。

①法的効力
エンディングノートは基本的に法的効力がありません。ですので、相続財産の分割方法を指定し、その通りに実現させたいような場合には、エンディングノートとは別に、法的効力がある遺言書を作成する必要があります。

②形式・内容
エンディングノートの形式や書く内容は自由です。
死後に関する葬儀やお墓のことだけでなく、延命治療の希望や介護のことなど、生前に関する希望を書くことができるほか、大切な人へのメッセージなども自由に記すことができます。
一方、遺言書は、所定の形式で書かなければならず、内容は財産の分割方法や子の認知など、法的効力を持たせることができる範囲が法律で決められており、範囲外のことを書いても法的効力はありません。

エンディングノートを書くメリット

「終活」を始める際に、エンディングノートを活用することで、今の生活状況の見直しや、ご自身がもしもの時どうしたいかを考えることができ、これから何を行うべきかがわかりやすくなります。

万が一、病気などで自分の意思が伝えられなくなってしまったり死亡した時には、家族が様々な判断や手続きをしなければなりません。
その際に、ご自身の希望をエンディングノートに書いておくことで、判断をするための指針となり、ご家族の精神的な負担を減らすことができるかもしれません。

また、ご自身の希望を口頭で特定の人のみに伝えている場合、家族間で本当に聞いたのかなど争いになってしまう場合がありますが、エンディングノートに書いておくことで、本人の希望が明確になり、無用な争いを防ぐことができます。

そのほか、相続財産の手続きを進める際にも、銀行口座、不動産、有価証券、加入している保険、債務の有無など必要な情報を書いておけば、財産をいちから調査する手間を省くことができ、相続人が手続きをスムーズに進めることができます。

エンディングノートに書く内容

エンディングノートに書く内容は自由ですが、ご自身の半生を振り返り、経歴や家族のことなど書きやすい項目から書き始めるのがおすすめです。そして、ご自身に万が一のことがあった時に家族が困らないように、必要な情報やご自身の希望についてもしっかり書いておくのが望ましいです。
一般的には、介護や医療など生前に関する希望と、葬儀や相続など死後に関する希望を記入します。
また、忘れがちですが、パソコンやWebサイトなどのログインパスワードも書いてあると、代わりに家族が手続きをする際の手がかりになります。

そのほか、家族や友人などへ日頃なかなか伝えられないメッセージなども書くことができます。
万が一の時には親しく交流があった人へ連絡してほしいなどの希望がある場合は、リストを残しておくことで、家族が連絡先を調査する手間がなくなり、希望が叶いやすくなります。

希望を伝える部分はあくまでお願いになるので、すべてが叶うとは限りませんが、本人の希望が伝わることでスムーズに進むかもしれません。

生前に関する内容

<自分自身について>
名前や生年月日、血液型をはじめ、これまでの経歴や家族構成、また、戸籍を取得する際に必要な本籍地など
<医療について>
持病やアレルギーの有無、かかりつけの病院や服用している薬、延命治療や病名の告知を希望するか、臓器提供の意思はあるかなど
<介護について>
「誰に」「どこで」介護を受けたいのか、その費用はどこから捻出するのかなど
<ペットについて>
ペットの世話をどうするのか、普段与えている食べ物やかかりつけの病院など

自分自身に関する項目は、基本的なことですが、家族でもすべてを知ることは難しいものです。
とくに医療や介護については大切な項目です。判断能力の低下や自分の意思が伝えられなくなってしまった場合に備え、ご自身の希望を詳しく書くことで、判断を迫られる家族の精神的負担を減らすことができるかもしれません。

死後に関する内容

<葬儀について>
葬儀の規模や場所、祭壇、遺影に関する希望や、連絡をしてほしい知人友人の連絡先、費用をどこから捻出するかなど
<お墓について>
菩提寺や契約しているお墓の詳細、納骨についての希望など
<相続財産について>
口座を持っている銀行名、貸金庫の有無、有価証券の有無、不動産の有無などのプラスの財産、負債などマイナスの財産など財産の詳細のほか、財産分割の方法の希望など
<生命保険について>
生命保険の加入状況など
<遺言書について>
遺言書を作成しているかどうか、遺言書の種類と保管方法など

葬儀については、エンディングノートに書くだけでなく、家族と話し合っておくのがベストです。
いざその時になってみると、落ち着いて考える間もなく葬儀業者の言われるまま進んでしまうことがありがちです。遺影など事前に準備しているものがあれば、伝えておくことで希望が叶いやすくなります。

作成にあたっての注意点

エンディングノートを書く上で注意しなければならないこともあります。
せっかくエンディングノートを書いても、必要な時に見つけてもらえなければ意味はありません。
エンディングノートの存在と保管場所を家族に伝えておくのがよいでしょう。

ただし、個人情報や財産の詳細など、生前に家族や他人に見られると不都合がある場合もありますし、盗難や紛失などに備えて取り扱いには注意し、保管場所は慎重に決める必要があります。
エンディングノートは1冊にまとめないといけないという決まりもありませんので、介護や医療に関する希望を書いたものと、財産の詳細や分割方法の希望を書いたものを分けて作成し別々に保管するなど、目的や確認してほしいタイミング別でエンディングノートを分けて作成し、保管先を分散させるのも一つの方法です。
また、印鑑や通帳とは一緒に保管しないようにし、暗証番号やクレジットカード番号などの記入については注意しましょう。

まとめ

今回はエンディングノートの活用について解説しました。
エンディングノートは、遺言書のように法的効力はありませんが、ご自身の希望や家族へのメッセージなどを自由に書くことができます。また、ご自身の希望や状況が変わったときにはいつでも書き直すことができますので、気軽に始めることができます。

エンディングノートと遺言書にはそれぞれの特性がありますので、より効果的にご自身の意思を実現させるためには両方作成することをおすすめします。
ただし、どちらもご自身がしっかりと考えられる状態にある時に作成する必要がありますので、早めに準備するよう心がけましょう。

当事務所では、岡山県司法書士会が作成したエンディングノートを取り扱っているほか、遺言書の作成支援も行っております。まずはお気軽にご相談ください。

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